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法務局の登記官

 法務局の登記官というのは、おそらく登記実務に最も詳しい人たちです。司法書士も業務として登記に関わっているので、当然に相応の法律知識や手続知識はあるのですが、典型的な型にはまらないケースではハッキリしないことも多いです。そのようなときは、一般の人も利用する法務局の登記相談窓口に司法書士が問い合わせをすることになります。電話口でややこしい現状を説明して何が必要なのかを聞くのですが、登記官の方々は初見の内容にもかかわらず極めて適格に具体的にアドバイスしてくれます。流石だと思います。
 
2023年11月10日 07:57

名寄帳と固定資産評価証明書

 不動産の移転登記の申請をする際には、登記申請の添付書面の他に不動産の課税価格の算定根拠として申請年度の名寄帳(なよせちょう)のコピーを提出することが多いです。固定資産評価証明書でもよいのですが、非課税不動産の有無の確認ができることから名寄帳の方が登記漏れを避けられるという利点があるからです。しかし、最近関わった相続登記案件で、明治時代にお亡くなりになった方を表題部所有者とする土地の保存登記では、思わぬところで固定資産評価証明書の利点を教えられました。相続人のひとりがご先祖様名義の不動産の固定資産税を払っていることは、珍しくありません。そのような場合、名寄帳には誰の不動産であるかを追加情報として記載してあります。しかし、ここにはご先祖様の名前はあっても住所の記載はありません。登記簿に記載されている表題部所有者(登記簿には表題部所有者の住所の記載はない)と戸籍上の死亡者との関係性の証明には使えないわけです。ところが、固定資産評価証明書には、不動産の表題部所有者の氏名と住所が記載されているのです。従って、このようなかなり昔に亡くなった表題部所有者の相続人が保存登記を申請する場合には、固定資産評価証明書を被相続人の最終住所の補足情報として提供できるという理由から名寄帳に勝るわけです。
 
2023年11月08日 08:08

無料法律相談会のお知らせ(再掲)

 鳥取県司法書士会は、月1回のペースで無料法律相談会を開催しています。次の西部地区の開催日は11月15日になります。場所はコンベンションセンターで、14時から16時までの完全予約制です。私も相談員として参加しますので、ぜひご参加ください。ご予約は鳥取県司法書士会(TEL0857-24-7024)に電話でお願いします。
 
2023年11月06日 08:12

文化勲章

 私が在学中の指導教授だった玉尾皓平先生が、このたび文化勲章を受章されました。玉尾先生は私が関わった大学教授の中でも最も傑出した人物で、知識の豊富さ、見識の高さ、研究を進めていく強い意志のすべてを兼ね備えた、まさに人類の英知と呼べる方です。出来の悪い私に、色々ご指導いただいたのは、今となってはビタースウィートな想い出です。根岸先生と鈴木先生がノーベル賞を受賞されたカップリング反応の根幹になる研究を、最初に提案し報文にされたのも玉尾先生でした。先生のご研究の範囲は、非常に幅が広くかつ有機化学への影響の大きいものです。とても現役を引退した私が、こんな場所で紹介できるスケールのものではありません。先生は現在豊田理化学研究所の所長として、現役で精力的に活動されています。今後も若い研究者を指揮して、さらなるご活躍をされることお祈りしています。この場を借りて、文化勲章の受賞をお祝い申し上げます。本当におめでとうございます。
 
2023年11月04日 09:39

少子化高齢化社会

 少子化高齢化が社会問題となって久しいです。少なくとも私が子供の頃には、そんな話題はなかったように思います。司法書士の業務に携わるなかでは、高齢化問題には少なからず直面します。認知症で遺産分割協議ができないとか、成年後見人の申立が必要とか枚挙にいとまがありません。これに対して少子化の方は、あまり気にも留めていませんでした。しかし、先日運転中にたまたまラジオで「啓生小学校の始業式が行われ、三百数十人の生徒が出席しました。」というニュースを聞いて愕然としました。私も啓生小学校の卒業生で、在校当時は八百人程度の小学生がいたはずです。明らかに半分以下に減っているのですね。これが、日本の全国レベルの傾向だとすれば、社会構造は大きく変わってしまっていると考えざるを得ません。深刻な問題です。
 
2023年11月02日 14:36

コロナの影響

 コロナウイルスによる感染症は、世界中を巻き込んで大変な犠牲者と社会の不況を生み出しました。経済というものは、人と物の流れが作り出しているという現実を、ハッキリと理解させられる社会的災厄だったと思います。飲食店などは、人が食べに行かなくなってしまうと経営を維持することができません。コロナ後になくなってしまった、美味しい飲食店は数知れません。とても残念なことです。私は感染することもなく、直接的な被害を受けることはありませんでしたが、間接的には色々な部分で影響を受けました。受験生だった私は、七月にあるはずの試験が九月に延期されましたし、合格後に受けるはずの司法書士会の研修は、合格者が集合して行う方式からズーム会議方式に変わりました。先日知人と話をしていたら、出張が減ってズーム会議で済ませられるようになったのが、コロナの産んだ数少ないプラスの側面だろうと言っていました。なるほどそうかもしれません。社会が大きなダメージを追う場面では負の側面ばかりが強調されますが、その陰では今まで日の目をみなかった新しい芽がひっそりと育っているのでしょう。人は苦しくても、前に進んでいくことが大切だと思います。
 
2023年10月31日 19:39

海外の不動産登記制度

 不動産登記制度というものは、実は国によって異なります。日本では、土地と建物が不動産として個別に登記することができます。旧日本領であった、韓国や台湾も基本的に同様な登記制度を採用しています。これに対して欧米はどうかというと、土地については同じですが、建物を不動産として登記する制度は存在しません。立派なビルも土地の付合物という扱いなのですね。建物だけを売買したときの、権利の保全は大丈夫なのでしょうか?なんとなく不安を感じます。
 
2023年10月29日 10:49

合わせ柿の化学

 私は合わせ柿が好物で、この季節には新鮮市場で買ってきた西条柿を焼酎で渋抜きして食するのを楽しみにしています。渋柿を食べる上では、渋抜きの作業が不可欠です。渋みの原因は柿に含まれるタンニンとされているのですが、これは一定の性質を有するポリフェノールの総称であって単一化合物ではありません。渋抜きとは、柿に含まれる水溶性のポリフェノールを不溶性に変化させて、舌で渋みを感じさせなくする過程になります。実際の反応は嫌気性条件を柿に課すことでアセトアルデヒドを内部発生させ、ポリフェノールを架橋して巨大分子に変化させるものです。その嫌気性条件の作り方が、渋抜きの方法として利用されているドライアイスやアルコールの処理になるわけです。食文化の発展の背景には、バイオロジーやケミストリーが隠れているのですね。
 
2023年10月27日 16:39

日本の戸籍制度

 戸籍制度というのは、人の生死や家族関係を記録する日本国の非常に優れた制度だと思います。近代的な戸籍制度は、明治5年に作られた壬申戸籍が最初で、その後何度かの改定を経て現在の戸籍制度になっています。戸籍謄本は相続に関する手続においては、もっとも重要な書面で、この公文書によって相続人が特定されて権利の承継が可能になっているのです。ところが海外の国々では、必ずしも日本と同等の情報量を持った戸籍制度がありません。婚姻証明書、死亡証明書、養子縁組証明書など、個別の証明書の請求は可能なのですが、家族関係を完全に網羅した戸籍と比べると、日本国の法定要件を満たさない場合が多いのです。つまり、外国人の相続人や被相続人が関与する相続手続には、足りない情報を補完する特別な情報の提供が必要になるということです。司法書士という仕事で海外とつながりが生じるというのは、一般的にはイメージしにくいことだと思いますが、たまにはあるんですね。世界は思ったよりも狭くて、米子市も世界に開けているわけです。
 
2023年10月25日 08:32

事前通知制度

 不動産登記法には、事前通知制度というものがあります。これは登記申請によって所有権や抵当権の権利を失う、登記義務者の本人確認手続のひとつです。通常登記義務者は、登記識別情報という登記名義人に交付されている12桁の暗証番号を提出することで、申請者の本人確認及び申請意思確認をすることになっています。しかし、実務上は登記識別情報を無くしてしまったりして、この暗証番号を提出できない状況が起こりえます。その場合に利用できる方法のひとつが、事前通知制度になります。この方法は、司法書士が手続の際に法務局に申し出るものではなく、登記識別情報なしに登記申請をした場合に法務局が取る手段になります。法務局は、登記識別情報無しの申請書を受け取ると、即日登記義務者宛てに本人確認郵便を郵送します。受取人が、その書面に登記申請委任状に押したのと同じ実印を押して2週間以内に返送すると、登記が受理されるという仕組みです。この手続の欠点は少し時間がかかる点で、積極的にやりたくはない手続です。しかし、抵当権者が書面を抵当権設定者に交付したにもかかわらず、これを紛失してしまったような場合には、全く非のない抵当権者(通常は銀行等の代表者)に公証人認証や司法書士事務所での本人確認情報作成のためのインタビューなどお願いできるはずもなく、この手続を利用することになります。
 
2023年10月23日 09:25

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