後見人制度の問題点
相続手続において、銀行預金や株式のような被相続人の財産は、不可分債権として法律上扱われます。わかりやすくいうと、相続関係を証明する書面を銀行や証券会社に提出しても、相続人が自らの法定相続分相当の財産を移転できないということです。この手続を行うためには、遺言書、遺産分割協議書、または相続人全員の同意書を提出して被相続人の財産を分割手続を経ないとなりません。ここで問題になるのが、被相続人の中に制限行為能力者がいる場合です。未成年者の場合には、保護者が利害関係人になる関係上特別代理人を選任して、この手続を代行させることができます。ところが、認知症の成年者の場合には、特別代理人により手続を代行させることは認められていません。唯一の方法が成年後見人を選任して、成年後見人に法律行為をさせることです。なぜこのような扱いなのかは疑問の残るところです。なぜならば、成年後見人が代理する手続自体は、特別代理人が代理する手続と変わりがないからです。被後見人の法律上の分配金を本人の口座に移転するという、特別代理人の仕事と全く同じことをするにすぎません。もちろん、本人の口座は銀行により凍結されるので、誰も使えない金が本人口座に入っても意味がないというのが、政府の考えということでしょうか。ただ、成年後見人は被後見人の財産管理を生涯にわたって行うもので、法律家が選任される場合には報酬支払をし続けなくてはならないというデメリットがあります。認知症の相続人の権利保護と他の相続人の権利保護の調整という意味で、特別代理人による手続代理を認めるべきではないかと当職は考えています。
2024年09月25日 08:38