上申書
登記を含めた法律手続は、通常法定された添付書面が要求されます。しかし、実務的には不可抗力に近い形で、必要な添付書面を入手できないことが出てきます。相続登記を例にとると、被相続人の特定は戸籍謄本と最終住所を証する書面によっておこないます。ところが、かなり昔に亡くなられた人の場合、最終住所を証明する除附票は市役所の保存期間の関係上、手に入りません。代替手段として登記済証を提出する方法とか、被相続人の記録された名寄帳を提出する方法があるにはあるのですが、これらの書面も時の経過の中に消えてしまって入手できないこともあります。法定要件を貫徹すると、この相続による所有権移転登記はできないことになってしまいますが、それではあまりにも社会的不利益が大きいので、法定相続人全員が「戸籍記載の亡何某は、被相続人に間違いありません。本登記申請により、いかなる紛争も起こらないことを確約します。」といった趣旨の一種の念書を提出することで添付書面に変えて手続を完了することになっています。このお上(法務局)に申し上げる念書のことを上申書といいます。当事者に一定の責任を負わせる形で、本来の添付書面の省略を認めて、実態上の不利益を防止しているわけですね。
2023年10月17日 06:57
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