相続登記義務化の背景
なぜ今になって相続登記が義務化されたのかは、一応理解しておくのがよいと思います。ひとつには、所有者不明土地が非常に多くなって、利用可能な土地が利用できないという不便さが、看過できないほど深刻になったことが挙げられます。先日米子図書館で開催された鹿島司法書士の相続登記の講演では、所有者不明土地の面積は九州の面積に相当するという話をされていて、さすがに同業者の私も驚きました。所有者不明とは、登記名義人と実際の所有者が異なる状態とお考えになればわかりやすいと思います。例えば亡くなった曾祖父が名義人の土地を、10人のひ孫さんが実質所有しているような場合になります。個別の案件の重要性はともかく、日本全体でみると途方もない損失を産んでいることになります。また別の理由として、登記簿や戸籍簿が電磁気的書面により保存され、ネットリンクで簡単に管理できるようになったというハード面の進歩も、このような法改正を後押ししたものと思われます。不動産の実態を正しく登記に記録するという、不動産登記法の理念の実現に一歩近づくということでしょうか。
2023年10月04日 12:45
投稿されたコメントはありません